砥川溶岩(とがわようがん)益城町
所在地
上益城郡益城町砥川
利用案内
- 駐車場:なし
- トイレ:なし
解説
名水を生み出す地下水フィルター!砥川溶岩
砥川溶岩とは
砥川溶岩は、益城町の南側に位置する船野山のふもとの赤井城趾付近にあった赤井火山から流出したと言われており、益城町砥川付近に厚く分布しているところからこの名前が付いています。ひじょうに穴が多く、黒っぽくて斑晶の少ない安山岩質の岩石です。
阿蘇火山は、27万年前から9万年前までに4度にわたる大爆発を繰り返し、多量の噴出物を堆積させていますが、重なっている順番から、砥川溶岩は阿蘇火山の1回目の噴火(27万年前)と2回目の噴火(14万年前)の間に形成されたと考えられています。
砥川溶岩の分布
益城町の南側には、飯田山と船野山がそびえ、その間を岩戸川が南から北に流れます。砥川溶岩は、船野山の北側のすそ野や南西側に位置する岩戸川の両岸とさらに西側のビール工場がある益城町小池から嘉島町上六嘉にかけての台地に露出しています。調査によると、地下では託麻台地から平野部にかけて厚さ60m程度でほぼ水平に分布しており、熊本市の帯水層として大切な役割を果たしています。
益城町砥川の露頭は国道443号から岩戸川に沿って南側に200mほど上流に歩くと川の対岸に見ることができます。河原にもそのかけらがたくさんあり、特徴である穴の多さを確認することができます。また、国道のすぐ北側に位置する飯野小学校では、ボーリング調査により地下40mにこの安山岩の存在が確認されており、前述の露頭より急に低くなることから、その間には布田川断層帯の一部が走り、飯野小学校を含む約1kmの区間の土地全体が落ち込んでいるということが予測されます。
熊本の水がおいしい理由
阿蘇に降った雨は、水がしみこみやすい性質の阿蘇火砕流堆積物と水を透しにくい基盤岩の間を高い方から引くい方へ流れて行きます。砥川溶岩は、阿蘇火砕流堆積物の間にあり、その穴や割れ目の多い性質から、地下水を蓄えたり、不純物を取り除くフィルターとしての役割を果たしています。また、その代わりにミネラル成分がとけ込み、地下からくみ上げられるときにはおいしい水となります。
熊本市は、水道の水源をこの良質な地下水でまかなっていますが、近年、地下水位の低下が見られ、地下水を守ることも大切です。背の高い建物を建てる際にも、この砥川溶岩に杭を打ち込まないなどの呼びかけも行われています。
参考文献
田村実 『熊本の土地の生い立ち−熊本市及びその周辺の地質−熊本地学会 1995
渡辺一徳ほか 『阿蘇カルデラ西麓の活断層群と側火口位置』 第四紀研究 1979
水田敏夫ほか 「砥川安山岩溶岩中の気泡の形態と分布」『火山 第2集』 1990
熊本県地質調査業協会地盤図編纂委員会 『熊本市周辺地盤図』 社団法人熊本県地質調査業協会 2003
周辺情報
近くには、飯田山常楽寺、赤井城趾があります。