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かずら豆腐(かずらどうふ)八代市

かずら豆腐のイメージ1
かずら豆腐のイメージ2

所在地

八代市坂本町鮎帰

利用案内

  • 駐車場:
  • トイレ:

解説

かずらでくくっても壊れない?

豆腐は夏は冷や奴、冬は湯豆腐、木の芽の時期は田楽と、年間を通じて日常のおかずとして、また酒の肴として楽しめます。
さて、決して飽きのこない、日本人と切っても切り離せない食材、豆腐ですが、生まれは中国です。漢の高祖劉邦の孫、淮南王劉安が発明したという言い伝えもありますが、おそらくは8~9世紀唐代中頃の発明ではないかと考えられています。日本にいつ豆腐が伝えられたか明確な時期はわかりませんが、文献に最初に豆腐が現れるのは平安時代末(1183年)のことです。鎌倉時代に入り禅宗の伝来とともに精進料理の材料として、豆腐作りは寺院を中心に発展しました。江戸時代になりようやく、僧侶や武士の食べ物であった豆腐が庶民に普及するようなりました。とはいえ、今では食べようと思えば毎日でも食べられる豆腐ですが少し前までは豆腐屋があるような町中を除き、豆腐は日頃食べられないごちそうで、ハレの日の料理に欠かせない食材でした。
ところで、坂本村鮎帰(あゆがえり)地域には柔らかくてこわれやすいというイメージをくつがえす伝統の豆腐が今も作られ食卓を彩っています。その名は「かずら豆腐」。つたかずらで結び、手で下げてもこわれないほどに固いことからその名が付きました。
かずら豆腐の特徴は何より料理のしやすさと日持ちの良さです。その固さゆえ、普通の豆腐の2倍はあろうかという大きさにもかかわらず、片方の手で楽に持つことができ、まな板の上で小さめに切ったものも崩れないので簡単につまむことができます。水気をしっかりとってあるので味付けをする際もしっかり味がしみこみ、元々の風味の良さと相まって薄味なら上品な仕上がりとなります。
冷蔵庫のない昔でも、干したり、炭火で焦げ目をつけたり、お湯にさらすことで冬場なら1週間は楽に保存がきいたそうです。かずらでしばって軒下につるすこともあったそうです。
自家製の地大豆と山間の清い水をいかした鮎帰のかずら豆腐の作り方をご紹介しましょう。盆や正月、冠婚葬祭の際、挽(ひ)き臼、釜のそろっている家を中心に2~3軒の家が一つにまとまって共同で作りました。
水に漬け柔らかくもどした大豆を挽き臼ですり、水で煮ます。これを漉したものが豆乳です。豆乳ににがりを加え、布を敷いた箱型に流します。にがりも各家で用意しました。海の水を干して作った昔の塩はざるに入れておくと、下に滴がしたたり落ちてきます。これがにがりです。昔は豆腐を作るためにざるに塩を入れ下にたれるにがりを集めていました。
かずら豆腐の製法上の特色は、水気をとるために箱型(昔は袋を用いることもあったそうです)に入れた固まりかけの豆腐に重石を長くかけることです。
10年ほど前までは一般家庭でも3軒共同でかずら豆腐を作ることもありましたが、今ではほとんどみられなくなりました。生活研究グループ「鮎帰会」が日常的に作る他は、地元の豆腐店1軒が時折作るのみとなっています。
このかずら豆腐は地元の道の駅、直売所等で販売されています。また、かずら豆腐をみそに漬け込んだ「かずら豆腐のみそ漬け」もみそ風味のチーズの味わいで人気を呼んでいます。
かずら豆腐は、生のまま適当な大きさに切り、しょうがじょう油またはからし味噌につけてごはんのおかず、お茶うけ、大人のお酒の肴に美味しく、また、鉄板焼きにしても、すき焼きにいれてもとても美味しく味わえます。最後に地元の方に教えてもらった煮染め(にしめ)の作り方をご紹介します。

かずら豆腐の煮染め<生活研究グループ鮎帰会発行パンフレットより>
〈材料〉
かずら豆腐:1丁だし汁:2カップうす口しょう油:1カップ砂糖:60グラムみりん:少々塩:少々
〈作り方〉
(1)豆腐は8~10mmくらいの厚さに切る。
(2)だし汁に分量のうす口しょうゆ・砂糖・塩・みりんを合わせて煮汁をつくる。
(3)煮立った煮汁の中に(1)の豆腐を1枚1枚ていねいに入れる。
(4)はじめは強火で沸騰するまで煮る。
(5)沸騰したら弱火で3分間炊き、火を止めできあがり。器に盛り、熱いうちにいただくのが一番おいしい食べ方です。

参考文献

坂本村村史編纂委員会『坂本村史』 坂本村 1990

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