栄町の獅子舞(さかえまちのししまい)宇城市
所在地
宇城市松橋町栄町
利用案内
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解説
昔も今も心躍る獅子舞
毎年10月8日から9日にかけて松橋神社の秋祭りが行われます。このお祭りは一年間の穀物の収穫を祝うお祭りで、境内では様々な催し物が行われます。また、御神輿(おみこし)など神幸行列も行われ、栄町の獅子舞はその行列の中で演じられます。栄町の獅子舞は、明治初年に隣町の小川町から伝えられたと言われていますが、詳細については不明です。しかし、町内に住む人々の無病息災を願う思いが込められた伝統芸能として伝えられています。
8日の午後7時頃、松橋神社で獅子に魂(たましい)を入れてもらいます。魂受けをした獅子は御幣(おへい)という飾りを頭に付けてもらい、神社の舞台で舞を奉納します。その後、町内の交差点や各家を午後10時頃まで打ち込んで回ります。打ち込みとは獅子頭についた鈴を鳴らしながら歯を「パクパクパク」と鳴らし、四股を踏む一連の動作で、目の前の獲物に襲いかかる獅子の動きです。これには、人々の健康と安全を願う思いが込められています。9日には、午前9時から一日かけて町内を打ち込み、町内のショッピングセンター、商店街など6カ所に設置された会場で舞が行われます。
舞は青色の雄獅子と赤色の雌獅子の2頭と、珠ふり2名、太鼓と鉦(かね)、チャルメラで構成された楽で行われます。珠(たま)ふりとは中国服を着て、金色の珠を持った子どものことです。舞はまず、迷子になった子どもが神様から珠を授かる場面から始まります。手に持った珠を大きく上から下へ振ったり、とんぼ返りをしているうちに、二頭の獅子が眠っている所に来てしまいます。そこで獅子を退治しようと、まず雄の前で「アップン」とかけ声とともに、獅子の目の前で珠を8の字に回します。目を覚ました獅子は、目の前の珠を追いながら、チャルメラに合わせゆっくりと起きていきます。その後獅子は、珠を食べようと1回、2回と飛びかかっていきます。子どもは獅子に食べられないよう珠をふりながら後に下がります。そして獅子が歯を鳴らしながら飛びかかったとき、「アップン」と言いながら獅子の目の前から脇に珠を隠します。珠が見えなくなった獅子は、あきらめて寝てしまいます。次に、雌の獅子を起こし、雄と同じように獅子を舞わせます。一頭ずつ起こす舞をくり返し、最後は二頭を起こし舞わせます。このとき子どもたちは、今まで手から離さなかった珠を地面に置き、獅子をおびき出します。歯を鳴らし、二頭同時におそってくるのに対し、子どもは珠をつり上げて脇に素早く隠し、「アップンアップン」のかけ声をかけます。この時から太鼓と鉦は激しく演奏され、獅子の荒々しさを表現しています。3回くり返すと、最後には獅子が子どもになつき、二人を背中に乗せて終わります。舞の時間は30分程度です。
獅子は大人が担当し、一頭を頭と胴体に一人ずつ入り、二人で協力して演じます。珠ふりは、栄町に住む小学校1~4年生、楽は小学校5~6年生が担当しています。以前は栄町の子どものみで活動していましたが、少子化のため活動が難しくなりました。現在では、町の文化財を残す働きかけで、周辺地区の児童に参加希望者を募り、活動をしています。また、地域の伝統芸能を地元の子ども達に知ってもらうため、地元の小学校で舞を行っています。昔から町民に親しまれてきた伝統芸能なので、長く保存してほしいと思います。
参考文献
林田憲義 『松橋町史』 松橋町 1979
松橋町文化財保護委員会 『松橋町の文化財』 松橋町教育委員会 2002
『熊本県文化財調査報告 第120集 くまもとの民俗芸能』熊本県教育委員会編集・発行 1991