長福寺阿弥陀堂(ちょうふくじあみだどう)人吉市
所在地
人吉市下原田町
利用案内
- 駐車場:約5台
- トイレ:なし
解説
人吉市で最古の木造建築
長福寺阿弥陀堂は、下原田町に所在している阿弥陀堂です。現地は上原田の台地の南端にあり、とても見晴らしのよい場所に位置しています。
長福寺は、室町時代の応永8年(1401年)に原田地頭の豊永家の菩提寺として創建された寺院です。また、永正17年(1520年)、加茂明神と石室寺とが境界線をめぐり争い、両方併せて約30人の死者が出るという事件が起こりましたが、この時に石室寺住職の兄も亡くなったため、その亡きがらを葬った寺でもあります。
その後、江戸時代以降は住職も置かなくなり、堂のみが存続していたようですが、昭和26年(1951年)頃に、上野町内で阿弥陀堂が修復されました。
現在の阿弥陀堂は、桁行三間(約5.4m)、梁間二間(約3.6m)の瓦葺きの堂で、正面に仏壇を置き仏像群を安置していますが、改修前は、三間四方の平面に、寄せ棟の茅葺き屋根で、現存する来迎柱(らいごうばしら)前を内陣として本尊の阿弥陀如来像を安置したものでした。
長福寺阿弥陀堂は、人吉市内の木造建築物では最古のものであり、球磨地方の仏堂建築としても、湯前町の明導寺(城泉寺)阿弥陀堂に次ぐ古さを持つ建造物です。しかも大瓶束(たいへいづか)を使用した内陣の構造は、球磨地方で唯一のものであり、球磨地方の建築様式の変化を知るうえで重要な文化財です。平成6年(1994年)に人吉市の有形文化財指定を受けました。阿弥陀堂内にある厨子(ずし)、鰐口(わにぐち)、木造三界萬霊牌も人吉市の有形文化財指定を受けています。このほかにも、阿弥陀堂内には室町時代作の四体の仏像、境内には五輪塔や角柱石塔などが残り、中世寺院の景観を良く保っています。
参考文献
『人吉市の文化財地図』人吉市教育委員会文化課
上村重次 著『九州相良の寺院資料』1986年
周辺情報
近くの石水寺は、石橋、三十三観音七番札所の石室観音などで知られています。