河浦町のヘゴ自生地(かわうらまちのへごじせいち)天草市
所在地
天草市河浦町宮野河内
利用案内
- 駐車場:なし
- トイレ:なし
解説
恐竜の時代を思わせる木生シダの林
県指定天然記念物「ヘゴ自生地」
昭和40年、河浦町でヘゴの林が発見されました。場所は、宮野河内(みやのかわち)から南東の半島の方へ進んだ女岳外(めだけそと)集落の北側で、そのときには、高さ3m余り幹の直径15cmの大木が10本、大小合わせて33株あることが確認されたそうです。ヘゴは、南方系の植物ですから、このような北に、しかもこのような大木が生育していることが確認されたのは大変な発見でした。そこで、この自生地を保護するために、昭和44年に県の天然記念物に指定されました。
「−レッドデータくまもと2004−」では、絶滅危惧I B類(EN)に指定されています。
「ヘゴ自生地」のようす
現地に行くと、道路脇に「熊本県指定天然記念物 ヘゴ自生地」の立派な石碑(せきひ)がまず目に入ります。その先のスギ林下が、ヘゴの自生地です。道路からも、高さ3m、葉の広がりの直径3m級のヘゴが多数見られます。中に入って、近寄って観察するとその大きさが実感できます。ヘゴが林立する風情は、まるで恐竜の時代にタイムスリップしたかのようです。
8月に訪れた時、本数を数えてみました。生育しているところは、谷筋の長さ50m弱の範囲ですが、小さい株も入れると、100本以上生育していることが分かりました。発見から約40年の間には、心ない人によって荒らされて激減したり、雪害のために枯れてしまうなどして絶滅の危機に瀕(ひん)したこともあったそうですが、今は発見当時より株数が増え元気に生育しているのです。
ヘゴの分布が北上
近年、河浦町のヘゴ自生地以外にも、天草下島の数カ所で、ヘゴの生育が確認されるようになりました。ヘゴが絶滅をまぬがれさらに分布を広げているのはうれしいことですが、かつては、寒さに耐えきれずに枯れていたヘゴが、分布広げているということは昔に比べて暖かくなった証拠でもあるのです。
「ヘゴ」ってどうやって殖(ふ)えるの
ヘゴは、ヘゴ科のシダ植物です。木生ですが、シダですので花は咲かず、胞子(ほうし)でなかまを殖やします。ヘゴの胞子の直径は30μm(1μmは1000分の1mm)足らずですが、それが、3mにまでなるのですから、驚きです。また、1枚の葉の長さが2m、幅1mにも達するものからは、どれだけの数の胞子がとんでいくのでしょうか。興味深いものです。
参考文献
西岡鐵夫編著 『熊本の天然記念物 熊本の風土とこころ第二集』 1980
『熊本県の天然記念物第5集 天然記念物・刀剣』 熊本県教育委員会 1985
岩槻邦男編 『日本の野生植物シダ』 平凡社 1992
倉田悟・中池敏之 『日本のシダ植物図鑑1』 東京大学出版会 1979
『熊本県の保護上重要な野生生物リスト レッドデータくまもと2004』 熊本県環境生活部自然保護課 2004