市房山のツクシアケボノツツジ(いちふさやまのつくしあけぼのつつじ)水上村
所在地
球磨郡水上村湯山
利用案内
- 駐車場:市房山キャンプ場30台・車道終点5台
- トイレ:市房山キャンプ場、市房神社
解説
ツツジ
昔から日本人はサクラの花の美しさと並んでツツジの花も愛し、生育してきました。ツツジの名が初めて書物に登場したのは「万葉集」とされています。ツツジの用途は主として観賞です。それで、全国どこの公園でもツツジがない公園はないといえるほどツツジは植えられています。ツツジは、筒状の花という所から名がついたとされます。
ツツジの仲間
ツツジは広く世界に分布し1000種ほどもある花木です。ツツジ科ツツジ属の中でシャクナゲを除いたものの総称をツツジと呼んでいます。おおざっぱに言って暖かい地方に多いのが常緑性種で、寒地に多いのが落葉性です。日本での常緑性ツツジは、九州原産になるので、耐寒性に欠けます。しかし、ヤマツツジのように、寒地では半落葉性になりますが、日本全国に自生するものもあります。
アケボノツツジやアカヤシオなど落葉性のツツジの原種は、美しい花を咲かせますが、高山性のものが多いのであまり庭木には利用されません。それでいろいろな園芸種が求められるわけです。
ツツジの仲間で常緑性のサツキ(サツキツツジ)は、5月に花咲くところから名がつきました。また有名なミヤマキリシマは、九州の高山だけに見られるツツジです。アケボノツツジは、花の桃色をほのぼのとした夜明けの色に例えてその名がつけられました。アカギツツジはアケボノツツジの変種で、和名を赤八汐(アカヤシオ)といい何回も繰り返し赤く染めたという意味です。アケボノツツジとは枝の毛が無い点が大きく異なります。
ツクシアケボノツツジ
このツツジは熊本県指定の天然記念物になっています。水上村史には、「昭和6年に今までのアケボノツツジと異なる新しい変種として公表された」と書かれています。ツクシは筑紫からきており、筑紫というのは九州を表す古い言い方になります。このツクシアケボノツツジの葉の多くは、枝の端に5枚輪状になっています。葉の形はだ円形で長さは2.5cmから4.5cmくらいです。枝には毛がなく、花は濃い桃色で1−2個ずつつつき、雄しべは10本で雌しべの子房には毛はありません。
市房山の6合目から山頂付近にかけて多く生育して、花は5月中旬頃咲きます。葉がつく前に枝にびっしりと花を咲かせます。その見事な美しさは他に類を見ない程で、愛好家はわざわざ市房山まで見に来るほどです。登山道を汗をかきかき苦労して登っても、ツクシアケボノツツジの花を見ればその労がきっと報われることでしょう。
ツクシアケボノツツジはこの市房山の他に、二上山、六峰街道、大崩山などが名所です。
参考文献
『原色日本樹木図鑑』 保育社 1959
『水上村史』 水上村教育委員会 水上村 1970
『世界の植物 2巻』 朝日新聞社 1978
周辺情報
近くには、市房山キャンプ場、市房神社、市房温泉、市房ダム、親水公園、桜図鑑園などがあります。