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三加和の和紙づくり(みかわのわしづくり)和水町

三加和の和紙づくりのイメージ

所在地

玉名郡和水町板楠

利用案内

  • 駐車場:あり
  • トイレ:あり

解説

伝統の復活~三加和町の和紙~

三加和和紙のはじまり

和水町の三加和地域は江戸時代から和紙の産地として知られていました。天正15(1587)年の国衆一揆で荒れ果てた三加和の復興のため、元和5(1619)年に三加和山十町の北原両助が、芋生村(現在の鹿北町)の川原谷で和紙づくりを行なっていた慶春のもとで紙漉の技法を習得し、山十町で紙漉業をはじめました。元和7年には、両助の子どもである佐助・彦兵衛・両蔵が御用紙漉きを命じられました。三加和町を流れる和仁川・十町川(じっちょうがわ)の清流が楮(こうぞ)を晒すのに適していたこともあり、次第に和紙づくりに携わる人々が増えていきました。
江戸時代の「紙漉重宝記」によると、冬に刈り取った楮は、2尺5寸~3尺(約75~90cm)に切りそろえて鍋で蒸し、皮を剥いで乾燥させたのち、「一日一夜」川で晒して乾燥させて保存します。この楮皮をさらに煮て、川で晒し、樫または桜でつくった「擲台(たたきだい)」に乗せ、長さ3尺ほどの「擲棒」で叩いて繊維をほぐします。こうしてできた紙の原料に水を加え、「とろろ」(植物性の粘液)を入れかき混ぜます。その後、簀桁(すけた)で漉き、漉き終わった紙を紙床(しと)に重ねて水を切ります。もちろん漉いたばかりの紙は濡れていますから、紙と紙が付着しないように間に布を敷きます。水きりの後、1間ほどの板に「しべぼうき」を使いながら紙を丁寧に貼り付け、乾燥させると和紙ができます。

三加和和紙の発展

寛文11(1671)年、熊本藩は楮の苗を植え付けるよう領内に命令を出し、明和8(1771)年には大坂から楮苗を取り寄せて植え付けを奨励しています。宝永6(1709)年には領内の紙は残らず紙座で扱うこととし、また、頻繁に紙や楮を他国へ売ることを禁止しています。寛政4(1792)年に山鹿と南関に紙楮問屋、天保13(1842)年に山鹿と板楠に紙楮会所を設けて県北の楮を取り扱わせました。早くから財政危機に直面していた熊本藩は、紙やロウといった特産品の生産を積極的に推進し、専売制の確立を図ろうとしたのです。
さて、慶長13(1608)年の三加和における楮の植え付け面積は2反7畝18歩でしたが、明和9(1772)年には9反7畝27歩に増えています(注1)。当時の和紙づくりの従事者数や三加和全体の和紙の生産量については分かりませんが、「三加和町史上巻」には山十町村の文化10年~文政5年(1813年~1822年)間の御用紙の生産高が記されてます。これによれば、文化10年~文化14年の御用紙の上納分は、銀にして22~32貫で推移していますが、文政年間に飛躍的に伸び、同2年には1万束(1束=300枚)、銀にして211貫、米に直せば約3500石に相当し(注2)、上十町村の村高が300石余りであることを考えれば、和紙づくりが同村にとって最も重要な産業であったことが分かります。また北原寿助が長崎・天草の、北原忠次が大坂の販路を開発し、三加和和紙の発展に貢献しました。
しかし、近代に入り、輸出の基幹産業として製糸業が発展すると養蚕業を行なう農家が増加し、また洋紙の需要が高まり、さらに機械製紙が発展すると、和紙づくりは次第に衰退していきます。緑・春高・神尾地区の場合を見てみると、江戸末期には約850戸以上が和紙づくりに携わっていましたが、明治12(1879)年には480戸余り、明治34年には290戸余りと大きく減少しています。
戦後の紙不足によって、三加和和紙づくりの従事者は一旦は増えたものの、昭和20年代より急激に減少し、昭和37年、ついに最後の1人の方も廃業されてしまいました(注3)。

伝統の復活

平成4(1992)年、南関高校の美術工芸コース生の体験学習と、三加和町ふるさと祭りで30年ぶりに紙漉きが再現されたことをきっかけにして、僅かに残された紙漉道具を集め、紙漉経験者数名によって和紙作りが復活しました。そして、平成10年に手漉き和紙制作技術の復活と保護・保存をめざし「和水町みかわ手漉き和紙の館」が完成し、誰でも手軽に紙漉の体験学習ができるようになりました。
 
(注1・2)「三加和町史上巻」
(注3)「伝統工芸三加和の手漉和紙」

参考文献

三加和町史編集委員会 『三加和町史 上巻』  三加和町教育委員会 1994
『伝統工芸 三加和の手漉和紙」』三加和町教育委員会 1995

周辺情報

三加和には国指定史跡である田中城跡は和仁氏の居城で、肥後国衆一揆では城をめぐって激しい攻防が繰り広げられました。また、石橋、山森阿蘇神社の大樟や猿懸権現のイチイガシなどがあり、歴史と自然あふれる町です。

地図

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