作品紹介 「ポルトフィーノ」西村正次

08-001,3 ポルトフィーノ

           ーー20年前、
               ふと立ち寄った展覧会場で出会って、
                       思わず立ち尽くした絵なのーー
                                                         2016年新春の収蔵品展にいらしたお客様より

ポルトフィーノ

 イタリア北西部、ミラノやジェノバからほど近い小さな入り江に、人口500人ほどの漁村があります。バスや車では訪れることができないため、海からボートで乗り入れるか鉄道とタクシーを乗り継いでから徒歩で入村するしかありません。しかしこの街こそ、春から夏にかけて有名人やスポーツ選手で賑わうという隠れた高級リゾート地、本作品の舞台ポルトフィーノです。

ポルトフィーノ無料壁紙2                   CopyRight©Wallpapersok.com
 地中海の碧い海に、パステルカラーの街並みが夢のようですね。海辺にはお洒落なオープンカフェや高級ブティックが軒を連ね、明るい陽射しと海風のなかカラフルなヨットやクルーザーが行き交います。

 この美しくメルヘンな景勝地は、東京ディズニーシーリゾートの入口、メディテレーニアンハーバーのモデルにもなっています。そういえば園内には「ポルトフィーノ」というレストランもありますね。

 上の絵画と写真をよくよく見比べてみてください。実在する建物の形状や配色まで、忠実に再現されていますね。
 この美しさが決して画家のフィクションではないこと、そして画家が実際この地へ足を運んだことがよく分かります。

 

作者のエピソード

 作者の西村正次は、熊本県の松橋生まれ。東京へ出て美術を学び、美術教師を務める傍ら、公募展で受賞を重ねました。40代半ば頃から晩年にはヨーローッパへ約20回も渡航し、各地で目にした風景を作品制作に活かしました。

 若い頃の西村は、がっちりした体躯に長髪も髭ももじゃもじゃ、という大男でした。教師時代には、不良生徒を分厚い手の平で厳しく叱りつけることも度々で、生徒たちからは「海賊」「バイキング」のあだ名で慕われたようです。
 パステルカラーを主とする画風からは想像できないことかもしれませんね。

 とはいえ「海賊」は、若い頃から一貫して美しい風景画を好んで描きました。東京美術学校時代、外国の綺麗な風景ばかり描こうとする西村に、あるとき先生が言いました。
「似合わん絵を描くなぁ。もっと地元の絵を描かんか。」
すると西村は、
「田舎者だから美しいものに憧れるのです」
きっぱりと答え、あくまでも自分の描きたいものを描きつづけたそうです。
 自分の出自や欲求を恥じることなく、素直に、美しいと思うものを追い求めた画家の仕事だからこそ、それを見る私たちも衒うことなく、ただ美しいなぁと思えるのかもしれません。

 ちなみに、宇城市役所1階ロビーにも同様の作品が飾られています。美術館収蔵品とは別の作品ですが、本作の姉妹品です。宇城市へお越しの際は、ぜひご覧ください。

 

作者略歴

1922 熊本県下益城郡松橋町に生まれる。
1942 東京美術学校に入学するが、学徒動員の後、兵役で陸軍に入隊。
        最後に赴いたインドネシアのレンバン島で終戦を迎え、戦後に復員。
1949 東京美術学校(現 東京芸術大学)を卒業。不知火中学校に勤務。
1950 松橋町立西部中学校に1か月間勤めた後、熊本県立松橋高校に赴任。
        19533月に退任後、上京。
1957 第28回第一美術展に出品、運営委員として招聘される(2年で退会)。
1962 第6回安井賞候補新人展出品。                
        第1回個展(以後1999年まで日動画廊、兜屋画廊などの企画で17回開催)。
1963 第4回みずゑ賞候補新人選抜展出品(1964年にも出品)。
1967 第19回立軌展に招待出品(以後1968, 69, 70, 71年招待出品)。
1968 渡欧第1回(以後1997年まで19回渡欧)。
2013 4月死去(91)

 

基礎情報

作者 : 西村正次
題名 : ポルトフィーノ
制作年: 1995年
材質 : 油彩・キャンバス
寸法 : 80.5×130.5cm